北浦の郷土料理で、お正月から「ふくを招く」として、おせちに使われる。店に吊るしていると、よく「なんですか、これ?」と質問される。かつては、萩の街のあちこちで干された様子が、暮れの風物詩だったとか。一匹のフグ(シロサバ、クロサバ)を頭から三枚におろし、尾の部分をつなげたまま干したもの。
料理法は、米のとぎ汁に約1週間つけて、戻す作業から始まる。毎日朝夕、とぎ汁を換えてやわらくなったら、頭や骨の部分や身の部分を一口大に切る(全部食べられます)。これを、まず番茶でアクをとりながら30分ほどゆで、いったん汁を捨てる。次に、出汁とお酒で30分ゆで、その後、醤油、みりん、砂糖で味付けし、さらにコトコト煮詰める。出来上がったら、盛り付け。暖かいうちも美味だが、冷めてからも日持ちが良く、旨みが凝縮され、長く楽しめる。
良いものは、よく乾燥しているもの。身の部分が、深いあめ色が良い。生乾きのものや、身がどす黒くなっているものは、脂が酸化して古くなっている。クロサバフグは、シロサバフグに比べ、やや赤い。
おせち料理を作る家庭が少なくなっている。生活スタイルや嗜好の変化といわれるが、家族全員が、イベントとして料理を楽しんでほしい。失敗も経験。自分で作った料理は、格別。かかった手間ひまが、そのまま愛情として伝わる。